自省録
「自省録」という手記がある。書かれたのは今から2000年近く前で、著者は第16代ローマ皇帝マルクス・アウレリウス・アントニヌスだ。戦いの合間にテントでロウソクを頼りに、あるいは宮廷の自室で書き留めていたのが「自省録」である。
アウレリウスが自分の内面をひたすら見つめ、戒め、己を律する言葉が綴られている。哲学の示すところを実践に移すべく自分に言い聞かせていたのである。その言葉はあまりにも的確かつ心理をついていて、現代人が読んでも参考になるものばかりだ。
私はある一節を読んだ時に、衝撃を受けた。
今回のブログはその一説を引用して終えようと思う。
他人の過ちが気に障るときには、即座に自ら反省し、自分も同じような過ちを犯してはいないかと考えてみるがよい。たとえば金を善いものと考えたり、または快楽、つまらぬ名誉、その他類似のものを善いものと考えるがごときである。このことに注意を向け、さらにつぎのことに思い至れば、君はたちまち怒りを忘れるであろう。それは、「彼は強いられているのだ。どうにもしようがないではないか」という考えである。あるいはもし君にできることなら、その人間を強制するものを取り除いてやるがよい。
「自省録」岩波文庫 第10巻30
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