本書は”経営の神様”と異名を持ち、パナソニックを一世代で築き上げた日本を代表する実業家・松下幸之助が大事にしてきた物事の考え方について書かれたエッセイ集です。
見開き1ページあたり1編のエッセイが紹介されています。
本書は男性的で、日本人的な考え方が貫かれています。
「七度転んでも八度目に起きればよい、などと呑気に考えるならば、これはいささか愚である」
「けじめのない暮らしはだらしがない」
「人生は真剣勝負である。だからどんな小さな事にでも、生命をかけて真剣にやらなければならない」
『道をひらく』松下幸之助
以前紹介した河合隼雄が「優しいおじいちゃん」であるならば、松下幸之助は「頑固」といったところでしょうか。
しかし、松下幸之助には松下幸之助の良さがあります。
厳しい中にも、礼儀や信頼、謙虚、正直、決心、志、素直などの生きる上でのエッセンスが詰まっていると感じました。
私が感銘を受けた文章を5つほど紹介させてください。
万が一にも誤りのない100パーセント正しい判断なんてまずできるものではない。(中略)60パーセントの見通しと確信ができたならば、その判断はおおむね妥当とみるべきであろう。そのあとは、勇気である。実行力である。
できない理由を探したりしてしまう自分がいるので、この言葉は響きました。勇気と実行力を持ちたいものです。
人生つねに何かの心配があり、憂いがあり、恐れがある。(中略)”心配またよし”である。心配や憂いは新しくものを考え出す一つの転機ではないか、そう思い直して、正々堂々とこれに取り組む。
「心配・憂い・恐れ」があるから創意工夫が生まれる、そう思えるようになりたいと思いました。
いっさいに何の不安もなく、危険もなければ心配もなく、したがって苦心する必要もなければ努力する必要もない、そんな境遇にあこがれることがしばしばある。しかしはたしてその境遇から力強い生きがいは生まれるだろうか。
「不安・心配」がなければ、強い生きがいは生まれない、まさしくその通りと思います。
どんなえらい人でも、三度に一度は失敗したほうが身のためになりそうである。そしてその失敗を、謙虚さに生まれかわらせたほうが、人間が伸びる。
たしかに、成功し続けて傲慢になるよりも、時には失敗して謙虚になるほうが、人として成長できる気がします。
昔の武士がいさぎよかったというのも、自分の非をいたずらに抗弁することなく、非を非として認め、素直にわが身の出処進退をはかったからで、ここに、修行のできた一人前の人間としての立派さがうかがえるのである。
潔さ、というものについて考えさせられる文章です。自分の非は素直に受け入れてしっかり責任をとるという精神も大切だと気付かされます。
今回は、手短に私の印象に残った部分を紹介させていただきました。
ご興味のある方は是非読んでみてください。
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