自分にコンプレックスがある、ありのままの自分を受け入れるなんて無理という方にこのブログを送ります。
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この本を手に取ったきっかけは、自分の実名報道が重くのしかかっていて、人生お先真っ暗だとおもったのがきっかけです。もう、救いようがないくらいに生きていくのが辛かったです。
そんな時に、見た目の問題を抱える方々に興味が湧きました。街を歩いているだけで笑われたり、子供から指をさされてみたり、生きにくさがあるはずです。
でも、この本の表紙に掲載されている皆さんは輝いています。
なぜなのか。
私は気になって、この本を読んでみることにしました。
この本は、様々な病気を原因に見た目に傷やアザなどの症状を持つ方たちに筆者がインタビューした本です。
この本は依存症とは全く関係がないように見えます。
しかし、外見に困難を抱えた方がどのように克服していったのかというエピソードが依存症者の身の上と重ねて考える部分も多く、大変参考になりました。
とくに、「ありのままの自分を認めよう」「自己肯定感を高めよう」というよくある心理学的な文言がしっくりこない方におすすめです。
自己憐憫を打破する
依存症は自己肯定できない病気といえると思います。自分のことを憐れに思うあまり、考え方が卑屈になってしまうこともあるでしょう。
「自分だけなんでこんな目に」という思いもあれば、「前科のせいで残りの人生をまともにやっていく自信がない」などと前向きになれない人もいるかもしれません。
では、見た目に悩みを持っている方はどう克服したのか。
中島勅人さん(表紙の一番上の写真の方)は、顔を修正する手術を複数回受けている方なのですが、手術の結果(顔の出来栄え)が思わしくなく、暗い気持ちになっていたそうです。
その時の看護師さんに諭されたそうです。「君は自分のことばかり気にしているけれど、君を大切に思ってくれている人のことを考えたことがあるの?」と。
困難に直面しているときに、応援してくれている人がいる。自分の良い部分を認めてくれている人がいる。そんな幸せな状況なのにふさぎ込んでいては失礼です。その看護師さんの言葉で中島さんは人の気持ちに応えるという考え方を持つようになりました。
それ以降は、就活の面接でも自分の容姿について落ち込んだ素振りは見せず、自己PRにつなげていきます。「この特徴のおかげで覚えてもらいやすい」「傷の話をしたら心を開いてくれやすい」といった具合です。
私のような依存症者(とくに刑事事件として司法の手が下された人)は、「もう自分は社会にいてはいけないんだ」とか、「自分は前科者だ」とか考えて暗い気持ちになることも多いと思います。そんな中でも支えてくれるサポーターのことを思ったり、性依存症になったこと・刑事事件となったことから、(もちろん反省も必要ですが)何かを学んで、残りの人生に生かしていかなければなりません。
人間関係を築く
人との間に壁を感じたことはありませんか?
私はあります。私には悩みが多く、他人とは壁を感じていました。前科で困っているとか、問題行動に伴う離婚歴があるとか、そういう現実的な悩みです。
また、問題行動をやめたいと思いながらやっていたこともあるなど、頭で考えていることと行動がめちゃくちゃだった時期もありました。
そんな特異なエピソードがありますから、街中で普通に生きている(ように見える)人とは壁を感じていました。
しかし、精神科に通うと、似た境遇や悩みを抱えるメンバーさんが大勢います。そこには壁はありませんでした。人との間に壁がない状況を初めて経験することができたのです。
本書に登場する石田祐貴さんはトリーチャーコリンズ症候群により特徴的な顔貌です。聴覚障害も抱えておられます。
そんな石田さんは、小中学校では一般の学校に通っていたから、聞こえない会話も聞こえたふりをして生活していたそうです。
高校から聴覚特別支援学校に通学するようになり、手話を覚え、聞こえたふりをする生活から解放されました。私の境遇に似ていると思い、文章に引き込まれてしまいました。
ところで、石田さんは大学に進学します。私であれば、不平等な見た目の問題に苦しむあまり、引きこもりになってもおかしくありません。しかし、勉強するために大学に進学したのです。すごい行動力です。
当然ながら特徴的な顔貌なので自分から話しかけないと友達ができません。しかし、友達を作るために、「僕と関わり合いたいと思ってもらえるようにしよう」という発想で人と接することで、大勢の友達に恵まれます。変えられないこと(容姿)に関しては割り切って、自分のできることに集中する姿勢は真似したいです。
割り切る・折り合いをつける
本書を読んでいると、「割り切る」「折り合いをつける」というような表現を皆さんがしていることに気付きます。「あきらめる」とはちょっと違うのです。
心理学の本をみると「ありのままの自分を認めよう」「自己肯定感を高めよう」とよく書いてあります。
しかし、不幸にして病気で顔が変形していたり、アザがある場合は、ありのまま受け入れることはできません。
「どうして自分だけが」と不平等を嘆くこともあるでしょう。
人の経験する困難があまりにも大きい場合は、ありのままの自分は受け入れられないし、肯定することもできません。
それは、依存症者の境遇にも言えると思います。
失ったものがあまりにも多く、ありのまま受け入れるには大きな困難だからです。取り返しがつかないとすら思ってしまうこともあるでしょう。
しかし、本書に掲載された方々は、見た目の問題を「割り切る」「折り合いをつける」ことによって克服しているのです。そのエピソードはあまりにも心強く、私は大きなエネルギーをもらいました。
自分の問題を「割り切る」「折り合いをつける」。それはきっと、変えられないことを受け入れ、変えられることを変える勇気をもち、変えることのできるものとできないものを見分ける賢さをもつということなのかもしれません。
さいごに
本書の表紙裏に記載された素敵なメッセージの引用でレビューを終えようと思います。素晴らしい本ですのでぜひ読んでみてください。
乗り越えた悩みが大きければ大きいほど、人は魅力的になれる。
『顔ニモマケズ』水野敬也
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