自己治療仮説

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1985年に心理学者カンツィアンによって提唱された、依存症についての仮説。

その内容を要約すると下のようになります。

  1. 心理的な痛みこそが依存症や嗜癖行動の中心的問題である。困難や苦悩を抱えた人は、その物質や行動が(一時的ではあるが)安らぎをもたらすことを発見してしまったがゆえに、依存性物質や嗜癖行動に頼らざるを得なくなっている。
  2. 依存症を抱えている人は、決して手探り次第に「気分を変える物質や行為」に手を出しているのではなく、困難や苦悩を緩和するのに役立つ物質や行為を選択している。
  3. 依存の成立に必要な報酬は、物質がもたらす快感やハイな気分だけに限らない。どう考えても苦痛としか思えないような破壊的な行動さえも、それが「説明可能な苦痛」であるがゆえに、「説明困難な苦痛」から意識を逸らすのに有効な場合がある。

一言で表現すれば、依存症の原因は本人の性格ではなく、本人が持つ苦痛や苦悩であり、依存物質や問題行動は安らぎをもたらしてくれるということです。

自己治療仮説の対局にあるのが、依存症を悪癖や性格上の欠陥とする”快楽主義”です。

自己治療仮説に従えば、依存症の再発予防のためには、依存していた物質や行動がなくても安らぎを得られるようにしていかなければなりません。刑事罰よりも治療が重要であるというハームリダクションの考え方を自己治療仮説は支持しています。

参考文献は以下の書籍です。

ご興味ある方は下の記事も併せてご覧ください。より詳しく、自己治療仮説を解説しています。

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