私が逮捕・勾留されたときに、一緒の部屋だった人(会社社長)が本を出版しました。
彼とはほぼ同時に留置場に拘留され、同時期に釈放されました。
なんとか連絡先を口頭で教え合い、釈放された後に一度食事をさせてもらっています。
今回は彼の出版に際し、本を贈呈していただきましたので、レビューしたいと思います。
この本の最大の特徴が、私がイラスト付きで出てくることです(笑)
彼女にも読んでもらいましたが、結構に似ているとのことでした。
肝心の内容ですが、本書は堅苦しくなくて、スイスイ読み進めることができます。
留置場での生活はほとんどの人が知らないと思います。
基本的に暇なので、食事が大きな日々のイベントです。それ以外は取り調べ、検察庁に行く、風呂に入る、差し入れが届く、弁護士接見などがイベントなのですが、それらすべてありのままに描かれています。私も読んでいてとても懐かしくなりましたし、もう二度と留置場には入りたくないと思いました。
特徴的なのが、社長の心境です。
「贅沢」とは、たいそうなものではなく、ソファーやクッションがあるとか、テレビを見るとか、水道水じゃなくてミネラルウォーターが飲めるとか、トイレが個室で誰からも見られないとか、髪を洗うときにコンディショナーがあるとか、身体を洗うタオルがあるとか、綿棒が使えるとか(中略)。留置場にいるとこんな些細な事が贅沢だったのだと気づかされる。そして慣れてしまえば、そんな贅沢もどうでもよくなるのだ。(中略)『煩悩がなくなっていき、愛だけが残る』というか、必要な物、どっちでもよかった物、無駄だった物が明確に見えてきて、頭の中には本当に心から必要としている物しか残らないような感覚になっていった。
新垣栄二「留置場のススメ」より
留置場というのは不思議なもので、瞑想空間に近いものがあります。
節制を強いられ、社会から隔絶され、身の安全と最低限の衣食住だけが担保されます。
そんな中にいると、昔の生活が懐かしく思えますし、さらに進んで、自分は人生で何を大切にして生きていけばいいのかというのを考え始めます。金が必要なのか、名誉が必要なのか、とか。(大切にすべきは人間関係と自己実現なのだと思います)
私は、留置場の中で、彼女との「普通」の生活に憧れました。「普通」というのは、公園に行くとか、買い物に行くとか、時々外食に行くとかそれくらいの日常です。そのような当たり前を自分のやりたいときにできるのが幸せなのだと思います。
この本を読んだ時に印象的だったのは、社長の心境と私の心境が似ていたというところです。
「留置場のススメ」というのは、福沢諭吉の「学問のすすめ」をモジったタイトルでしょうが、「留置場」という懲らしめられるところ、普段は入ることのないところを「ススメ」ているところに妙味があります。「留置場」を肯定的にとらえているということです。それはきっと、留置場に入ることで、大切なことに気が付くことができたという心理面での変化を評価してのことなのだと思います。
もしも、留置場に入ったことがある人は、そのころの記憶をいい意味でも悪い意味でも呼び戻すためにぜひ読んでみてください。留置場とは無縁の方も、きっと興味深いと思います。おすすめです。
コメント
強烈な表紙ですね。(笑)
これもお知り合いの方が描かれたのでしょうか?
イラスト付きでブログ主さまも登場なさるということで興味がそそられました。
書店に行った際には探してみます。
留置所でできたお知り合いがこうして社会復帰されているのは喜ばしいことですよね。
9月に入ったもののまだまだ暑いです。
どうぞ熱中症に気をつけながら頑張っていきましょう。
遅ればせながらご回復おめでとうございます
いつもコメントありがとうございます。
この強烈な表紙は、実際に留置場で社長がノートに書いていたものです。
(その時はモノクロでしたので、釈放後、色を塗ったのだと思います)
彼はギャグセンスもいいので、非常に面白い本となっていますら、ぜひ読んでみて下さい。
それにしても、彼も私も、釈放となり、再び社会で生活できているのは幸いな事だと痛感します。
KK様も熱中症や、ふとした拍子の怪我などにはくれぐれもお気お付けくださいね。