11月26日に斎藤章佳さんの『セックス依存症』が販売されます。
盛りだくさんの内容になっており、関係者は必読の書かと思います。
斎藤さんの書く性依存関連の本には「男尊女卑」がキーワードとして出てくることが多いですが、今回も目次にその文言がありますね。
個人的には、依存症の原因を「○○社会」のせいであると論じるのはあまり意味がないようにも思います。
なぜなら、「○○社会」が原因だとすると、治療を考えるうえで、社会を変えていくしかないということにもなります。
また、社会が原因なのであれば、その社会に属する人間すべてが性依存症になっていないと説明がつきませんし、少なくとも日本が他国に比べて著しく性依存症が多くないとしっくりきません。(仮に日本に性依存症が多いという結果が出たとしても、日本特有の満員電車問題を考慮する必要があると思います)
以上、斎藤さんの著書に対して批判的な意見を述べてしまいましたが、榎本クリニックで培った豊富な臨床経験から綴られた本書は、必読の書であることは間違いありません。
目次を見る限りでは、自助グループに言及している点が新しいと思いましたし、豊富な実例が書かれているのも興味深いです。
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以下は出版社から公開されている目次の引用になります。
第1章 誤解だらけのセックス依存症 ――彼らは「性欲モンスター」ではない
●あなたは大丈夫? 性依存症チェックリスト
●「セックス依存症」という病名は存在しない
●セックス依存症は「性欲の問題」ではない
●性依存症者を治療から遠ざける「男らしさ」の呪い
●性被害に遭った女性が自傷行為的にのめり込む
●性的嫌悪があってもセックス依存症に陥る
●苦痛や孤独を一時的にやわらげてくれる「負の強化」 ほか
第2章 危険なセックスをやめられない人たち ――実例から背景を読み解く
●実例(1) 強引な性行為に及んでしまう ~認知の歪みと承認欲求~
●実例(2) 不特定多数とのセックスがやめられない ~過去の性被害と依存症~
●実例(4) クリニックの外で性行為に及ぶ ~空虚感に耐えられない~
●実例(5) 強迫的な自慰行為にのめり込む ~童貞・処女の性依存症~
●実例(7) オンラインセックスへの耽溺 ~コロナの時代のセックス依存症~
●実例(8) 親の過干渉から生まれる性的嫌悪 ~見えない虐待「優しい暴力」~
●実例(10)「かわいそう」な息子と関係を持つ母親 ~障害者と性的虐待~ ほか
第3章「性的しらふ」を求めて ――セックス依存症の治療:医療機関と自助グループ
●性依存症は「治る」のか?
●医療機関での性依存症の治療
●依存症の回復に欠かせない「自助グループ」の存在
●性依存症の自助グループ「SA」と「SCA」とは?
●ミーティングの指針となる「12のステップ」
●マスターベーションしないと性欲が溜まって危険?
●再発は回復のプロセス? ほか
第4章 依存症当事者に聞く自助グループの内側 ――「底つき」から回復への道筋:ミラクルさん(仮名)の場合
●危険なセックスに耽溺、HIV陽性で依存症クリニックへ
●「機能不全家族」と依存症の関係は?
●マスターベーションは意外とやめられる
●セクシュアルマイノリティや女性と自助グループ
●依存症者同士の恋愛は共倒れになりやすい
●回復への道筋「セクシュアルリカバリープラン」
●セックスレスとの向き合い方 ほか
第5章 性依存症の背景にある社会問題 ――性欲原因論、男尊女卑、性教育とアダルトコンテンツ
●「男性は性欲がコントロールできない生き物」は間違い
●日本は「男尊女卑依存症」社会
●求められるのは家庭での性教育
●父親が性について子どもに語る言葉を持っていない
●「AVはフィクション」だとちゃんと伝える
●加害者臨床の場でも問われる「性的同意」の重要性
●依存症回復のカギは自己肯定感より「自己受容」 ほか
第6章 AV男優・森林原人と語る そもそも「性欲」とはなにか? ――幸せなセックス、依存症のセックス
●僕もセックス依存症だったかもしれない
●「首絞めて」男尊女卑を内面化した女性の性欲
●性欲は「条件付け」と「学習」でアップデートされる
●アイドルの追っかけを生きがいにして痴漢をやめた人
●VRやセックスドールは性依存症の抑止力になるか?
●一般人よりはるかに厳格な撮影現場の「性的同意」
●僕を救ってくれたセックスの幸福感や悦びを伝えたい ほか
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