『居るのはつらいよ』はデイケアに関する本です。
素晴らしい本でした。このような読みやすくて、深く考えさせられる本はなかなかありません。
この本は、臨床心理士が主人公の物語で、実際に臨床心理士である筆者が経験した内容が描かれています。
臨床心理士として、京大大学院を出た主人公は、ひょんなことから、沖縄にある精神科に勤務します。
本人は、密室で行われる、カウンセリング業務をメインにしたいと考えていました。
その方が専門的で、自分の仕事に誇りを持てるし、クライアント(患者)の役に立てると思っていたからです。
しかし、実際は、精神科でのメインの仕事が「デイケア」でした。
いままで触れたことのないデイケア。
とても退屈に感じたそうです。
患者さんとボードゲームをしたり、
患者さんの送迎をしたり、
季節のイベントをしたり、
お茶を一緒に飲んだり、
それは思い描いていた臨床心理士の仕事とは違っていました。
しかし、筆者はカウンセリングとは異なる魅力をデイケアに見出します。
そして、退屈することの大切さに気付きます。
「セラピーとは何か。ケアとは何か。」「『ただ、いる、だけ』の価値とそれを支えるケアの価値」「依存とは何か、依存労働とは何か」について、根源的に考えることとなりました。
私の印象に残った文章もたくさんあります。
「心の深い部分に触れることが、いつでも良きことだとは限らない。(p.49)」
「自立を良しとする社会では、依存していることそのものが見えにくくなってしまうから、依存を満たす仕事の価値が低く見積もられてしまうのだ。(p.107)」
「人は本当に依存しているとき、自分が依存していることに気がつかない。(p.114)」
私は、たったいま、デイケアを一時中断し、就職活動に専念しています。
デイケアを振り返りながら、本書を読みました。
「確かになぁ」と頷きながら読んだり、「そういう解釈もあるかぁ」と唸らせられたり、
とても考えさせられる本でした。
自分がデイケアに通っている人、大切な人がデイケアに通っている人、デイケアに携わる人、そんな人に本書をオススメいたします。
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