「底つき」や「底つき体験」というのは依存症治療の入り口と言われています。
「もうこのままではダメだ」と本人が自覚することで、治療が開始されるということですね。
私は、この底つき体験というのは、ネガティブな感情だと思っています。
つまり、絶望・不幸を見ることで自分が悪い状況に陥っていると気付くんですよね。
しかし、もっと、温かいポジティブな気付きというのもあると思うのです。
それが、優しさに触れたとき。
人は、優しさに触れたときに、恥ずかしさや罪悪感を抱くときがあります。
支えてくれる人の優しさに触れて、「このままじゃだめだな」と感じることもあります。
ちょうど、誰かと握手したときに、「こんなに自分の手が冷たかったんだ」と気付くことがあると思いますが、そんな感じです。
私の場合は、深く妻(当時の彼女)を傷つけました。
それも一度ではありません。
そんな時に、「まずは、あなたがどういう風に治療を受けて変わるかを見てから、別れるかどうか決めます」と現実的な意見を彼女は言ってくれました。
別れるかどうかは、いったん保留にしてくれたのです。
そして、彼女と接していくうちに、自分の中の邪悪な部分、罪悪感、羞恥心など様々なことに気付くことができました。
次第に、彼女も私の人生を応援してくれるようになり、私と彼女は結婚し、子供を授かることができました。
もしも、あの時に彼女が出ていってしまったら、自暴自棄で問題行動をしまくってしまったかもしれません。
本当に彼女には感謝しています。
話を元に戻しますが、
離婚する・別れるなどの強烈な体験による底つきというのは、あまりいいものではないと思うのです。
脅すこと・脅されることに近いと思います。
それはそれは辛いことでしょう。
一方で、ただただ依存症者の面倒をみてしまう(イネイブリング)のでは、
問題行動をやめさせることはできないと思います。
では、どんな接し方がいいのか。
「私はあなたの問題行動に傷ついています」と伝え、
「これからのあなたの頑張りを見ながら、どうするか決めていきます」と宣言し、
辛抱強く回復を見守る
それが「優しさ」ではないかと思うのです。
その優しさに触れたときに、当事者は自分のことを情けないと感じます。
そして、変わろうとする力が湧いてきます。
少なくとも私はそうでした。
コメント