性犯罪は、ものすごく悪いイメージだと思います。
それは、結果が極めて重大であるということや、普段タブー視されている”性”に関する犯罪であるからだと思います。
「変態」、「気持ち悪い」という意見ももっともだと思いますし、「ひどい」犯罪であることは間違いありません。
一方で、他の犯罪と比較してどうかというと、色々と私は考えてしまいます。
性犯罪を一度犯してしまった人は、刑務所で「ピンク」と呼ばれイジメられるのだそうです。
犯罪が原因で、失職し生活保護となった場合、寮や施設に入る場合もあるのですが、性犯罪だと寮や施設を断れてしまうケースもあります。
犯罪者・前科者を積極的に受け入れている企業もありますが、「ただし性犯罪を除く」という文言が付されていることがほとんどです。
性犯罪者は、「人間じゃない」かのような扱いを受けてしまうのです。
Yahooニュースなどの下にはコメント欄がありますが、性犯罪関連のコメントは、
「一生刑務所に入れて欲しい」
「去勢すべき」
といった、厳しいコメントが並びます。
これが、性犯罪に対する世間の認識なのです。
性犯罪者を排除したいというのが世間の皆さんの意見です。
性犯罪者は狂った人間というか、もう人間じゃないというレベルで蔑まれます。
少なくとも、オレオレ詐欺、薬物依存、暴行、詐欺などの”普通の”犯罪に関しては、社会復帰の道が残されていると思いますが、性犯罪を一度でも犯してしまうと、今の日本では再起することが困難です。
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性依存症は性加害です。被害者がいます。
皆さんから、「許せない」という気持ちが出てくるのは当然ですし、
”性依存症”という病気のせいにして欲しくないというのももっともだと思います。
許せない・病気のせいにするなという気持ちを皆さんが持つことは自然ですし、そこまで性犯罪者を許さなくても私はいいと思っています。
依存症だからといって罪が許されることはありません。
ただ被害を抑える為には治療しなければならなくて、その治療に支障をきたしてしまうような環境を作っているのは、国民の性犯罪に対する認識だとも思うのです。
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また、実は、犯罪者本人の自己認識も犯罪によって異なります。
性犯罪はそれ以外の犯罪に比べて「俺は変態なんだ」「俺はダメな奴なんだ」「俺はどうしようもないんだ」といった、自己否定の感情が強いと感じます。
つまり、性犯罪に対しては、他者のみならず本人も、非常に強く嫌悪感を示しているというのが現状なのです。
オレオレ詐欺、薬物依存、暴行、詐欺などの”普通の”犯罪は、それぞれ目的がはっきりしています。そして、それらの目的は、ある程度理解できなくもありません。自分でも「間違った考え方だった」といって反省することができるでしょう。
しかし、性犯罪は、そんな甘くありません。目的が”性”となると、日ごろからオープンに話している話題ではありませんから、「なんでこんなことを始めてしまったんだろう」「本当はこんなことやりたくないのにどうしてやめられないんだろう」といった、性依存症特有の自己嫌悪・自己否定が出てくるのです。
自分でも自分は何がしたかったのかということが、理解しにくいのが性犯罪なのです。
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犯罪は犯罪です。
本人は犯してしまった責任をとらなければなりません。
それが、罪を償うということです。
一方で、ある特定の犯罪だけが、否定され、蔑まれ、本人は再起が不能になってしまうのは、あまりにも厳しい現実だと思うのです。
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性犯罪者は排除したいという思いが国民にあると先ほど述べましたが、
その根底にあるのが、「性犯罪は再犯が多い」という認識です。
この認識自体が誤っているわけではありません。
確かに、性犯罪は再犯率が高いです。
しかし、この背景にある考え方が間違っています。
性犯罪者は人間性に問題があるとか、性欲異常者、体の設計図に欠陥がある、というようなとらえられ方をしています。
正しくは、性犯罪は脳科学的にドーパミンが関連する依存症で、他の薬物依存症やクレプトマニアと同様です。誰でもなってしまう可能性があります。
正しく治療を受けなければ問題行動を繰り返してしまう依存症であり、正しく治療を受けるひとが少ないから、性犯罪を繰り返してしまう人が多いというカラクリなのです。
そのあたりの理解が国民にないので、「性犯罪者は変態という異常な人間のやることであり、やってしまった人間は排除すべき」という思想になってしまいます。
私は、いつの日か、「性犯罪は、ドーパミンが関連する依存症であって、再犯防止のためには治療が必要だ」と国民が思ってくれる日が来ることを願っています。
性犯罪者を排除するのではなく、治療をすすめるような社会が早く訪れますように。
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