『こころの処方箋』を読んで

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27章 灯を消す方がよく見えることがある

27章は、船が遭難したときの話です。

ある漁船が海釣りに出かけたところ、遭難してしまいました。方向が分からなくなり、慌てふためいた船員たちは、灯(たいまつ)で周囲を照らしますが、暗闇だけが映し出されて手掛かりが得られません。

途方に暮れていると、一同の中の知恵のあるものが、「たいまつを消せ」と言いました。

すると、現れたのは真の闇です。

しかし、目がだんだんと慣れてくると、全くの暗闇と思っていたのに、遠くの方に浜の町の明かりが見えます。

変えるべき方角が分かったので船は無事に帰ることができました。

このエピソードはとても印象的で、我々に重要な示唆を与えてくれます。

大切なことは、目先の解決を焦って、灯をあちらこちらと掲げてみるのではなく、一度それを消して、闇の中で落ち着いて目を凝らすことなのです。

そうしていくと、自分の心の深みから、自分が本当に望んでいることがどんなことなのかが、ぼーっと、出てくることがあるのです。

私がこの話を聞いて思ったことは、「留置場」に入ったときのことです。

当時、性犯罪で留置場に入るまでは、搾取的に性をむさぼっており、仕事は人間関係に疲弊していました。彼女との逢瀬は性的なものが中心となり、人として接することができていなかったかもしれません。

留置場に入ることで、未来がすべて描けなくなり、真っ暗になりました。

仕事、お金、人間関係、など色々なものが白紙となりました。

自分の人生は一回終わったという感じです。

留置場に入ってまず思ったことが、自分の仕事のこと、弁護士が誰になるか、弁護費用、被害者への示談のこと、起訴か不起訴か、自分の刑事罰がどんな量刑か、などなど。

目先の現実的な問題がぐるぐると押し寄せてきました。

しかし、留置場での生活に数日で慣れてみると、あきらめの境地に至ります。

悪いことをしてしまった。

与えられた罰をうけよう。

償おう。

そう思って、色々なことを手放してみると、心の奥底から、自分が本当に思っていることが出てきました。

「仕事がなくなって、あの人間関係から解放された」という思いと、「彼女と普通に散歩したり、公園にいったりしたいな」という思いです。「そんなにお金はいらないな」とかも思いました。

それが、私の率直な考えなんだと悟りました。

彼女とのありふれた日常に幸せがあったこと、仕事の人間関係に疲弊していたこと、性的なことに耽溺していたのは良くなかったこと(留置場から出た後も問題行動をしてしまい、彼女に露呈して底つきとなったのですが…)など、色々な気付きを留置場で得ました。

灯を消す方がよく見えることがあるのです。

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