制限のライン
依存症は「何でもしていい」という状況に身を置いてしまうと破滅に向かって行ってしまう病気です。「ご自由にどうぞ」というわけにはいきません。
一方で厳しすぎるルールを作ってしまえば、生活するのに支障が出てきてしまいます。
したがって、制限と社会性のバランスというのが必要になってきます。
たとえば、アルコール依存症の人を例にとると、
居酒屋の椅子に座って、なみなみとビールが注がれたジョッキを目の前にしている状況というのは、本人は耐えられないでしょう。
それがコントロールできないシチュエーションだというのは、誰でもわかります。
一方で、お金を一切持たないとか、家から出ない(買い物はすべて家族に依頼する)などという制限を設ければ、完全に安全でしょう。
しかし、それでは生活が成り立たないといいますか、生きているとは言えないと思います。
問題はその中間です。
お金をもってスーパーやコンビニにはいること、居酒屋街をうろつくこと、ノンアルコールで我慢するからと言って会社の飲み会に参加すること、これらはどうでしょうか。
非常に微妙なところだと思います。
ケースバイケースだと思います。
つまり、酒を目の前にしてはダメ、居酒屋街をうろついてはダメ、酒の席に同席するのはダメ、スーパーの酒売り場に近づくのはダメ、スーパーの食品売り場はOK、買い物に一人で行くのはOK、夜外出するのはOK、などなど、依存症における制限のラインがどこまでなのかというのを決めるのが難しいところなのです。
依存症の問題行動の核となる部分は当然注意が必要ですが、その核の周辺はどこまで注意したらよいかということです。
このあたりの制限と社会性のバランスが依存症治療の肝だと思います。つまり、ルール設定の難しいところがここなんですね。
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