依存症の場合
依存症は、やめたくないし、やめられない病気です。
とても、治しにくいと思います。
やめたくないというのは、依存症の問題行動にはものすごいメリットがあるからです。それをするのが猛烈に快感で、楽しくて、生きがいであるという場合もあると思います。脳科学的に言えば、快楽物質であるドーパミンがドバドバ分泌されますし、心理学的にいえば、「どうだすごいだろ」「ドキドキする」「安心できる」「愛やつながりを感じる」「成長している感じが味わえる」といった感情が得られます。そんな行為があったら、手放したくないと思うのも無理はないと思うのです。依存症をやめたいと思える状況にするのは簡単な事ではないでしょう。
やめられないというのは、コントロール障害を意味します。問題行動で少し人生の調子がくるってしまった人でも問題行動はなかなかやめられません。普通なら「やばいな、もうやめよう」と思うような状態でも「まだ大丈夫」と言って、行動を改めようとしません。これは、否認という依存症の症状です。無意識に自分を言いくるめて納得させてしまうのです。また、依存症に耽溺していているときは、理性をつかさどり、心のブレーキの役割をしている前頭前野が働かなくなってしまいます。脳科学的にも抑制が効かなくなってやめられないのです。依存症は、ブレーキとハンドルが壊れた車のように、暴走をしてしまいます。
依存症の問題行動をやめさせるには、
- 底つき状態にする
- 医療・自助グループにつなげる
しかありません。
底つき状態にするということは、”猛烈な危機感”と言い換えてもいいかもしれません。先ほど書いた通り、依存症の問題行動には大きなメリットが存在していて、自分から依存症をやめたいと言い出すことは難しいです。しかし、そのメリットを大きく上回るデメリットがあれば、依存症をやめるきっかけ、少なくとも医療や自助グループにつながるきっかけにはなります。それは、多くの場合は、刑事罰・失職・人間関係の崩壊だと思います。そこまで行くと、人生と問題行動を天秤にかけることができるようになります。人生が崩壊していると感じ、快楽よりも人生の方がさすがに大事だなと考えることができます。
医療・自助グループにつなげるとどうなるかについて少し話しましょう。素人が「あなたやめた方がいいよ」「なんでそんなことするの」「あなた変だよ」といって悪いところを叱責してしまいがちなのに対して、医療や自助グループは正反対のアプローチをします。「色んな人に迷惑をかけているのは分かっているのにやめられないというのは本当につらかったね」「きっと問題行動はある意味ではあなたを助けてくれていたんだよ」「同じような悩みを持っている人はたくさんいるよ」と依存症者に理解を示します。そして、ノウハウに基づいて、問題行動がやめられなかった理由を正しい知識として伝え、問題行動をできなくする環境をつくり、問題行動をやめ続けるメリットを見出し、問題行動をやめつづけさせます。依存症に効果が一番あるのは、ノウハウの蓄積された医療・自助グループに繋がることなのです。